高齢者におけるサルコペニアの最新予防法・治療法:性別とホルモンの大きな因子

メンズヘルスコラム
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高齢者におけるサルコペニアの最新予防法・治療法:性別とホルモンの大きな因子

サルコペニアとは
サルコペニア、すなわち加齢に伴う筋肉の喪失は、日常生活に不自由がでるほど筋肉量・筋力が落ちた状態で、フレイルと呼ばれる要介護の手前の状態の重要な要素の一つです。
 

男性の筋力の低下
30歳を超えると、10年ごとに3%から5%も筋肉を失うと言われています。
男性は、だいたい筋肉量の約30%を失います。筋肉が少なくなると体が弱くなり不自由さに加えて転倒や骨折のリスクも増加します。
特に下半身の筋力・筋肉量が上半身よりも早く衰えてきます。
例えば年齢による片脚立ち力の低下が握力よりも遥かに早いようです。
 

テストステロンの低下とサルコペニア
このサルコペニアの誘因として、テストステロンの低下が挙げられています。

しかし、2018年に抗サルコペニアの新しいガイドラインが発行され、レジスタンス・トレーニングと高タンパク質ダイエットが推奨されましたが、アナボリックホルモンに対する推奨はガイドラインにありませんでした。
健康な状態では、筋トレは当然筋肉量を増加する効果を発揮しますが、からだのアナボリック経路が整っていないと、筋トレを行っても効果が少ないはずです。

特にテストステロンは、筋肥大において重要な成長因子をレグレートし、タンパク質合成やサテライト細胞を活性化させることによって、筋肥大又は筋肉喪失予防において大事な因子です。
そのため、テストステロンが不足している場合は、筋トレによるサルコペニア予防効果も薄くなります。
 

筋トレとテストステロン補充療法
最近の研究でフレイル高齢男性において筋トレのみと、筋トレにテストステロン補充療法を併用した効果が検証されました。

結果として、筋トレ+テストステロンの群の方が筋肉と骨密度の喪失がより少なく、ヘマトクリットが増加しました。一方P S A値は変化しませんでした。
つまりテストステロン補充療法は筋トレに加えて、高齢男性のフレイル状態を予防するために大事で安全な方法で、同時に心血管機能を改善する可能性もあります。

一方、サルコペニアには性差のメカニズムが存在し、女性のサルコペニアでは低栄養がサルコペニアのオッズを有意に高くするようです。
血清IGF-1は女性のサルコペニア被験者の間で有意に低いことから、IGF-1はサルコペニアに対する保護効果の傾向があると考えられます。
実際IGF-1が1ng/ml上がるごとに、女性のサルコペニアのオッズが1%減りました。
そのため、IGF-1アゴニストは女性に大きく期待されています。
 

結論
結論としては、生理学の違いによって、サルコペニアの予防と治療は性別によって合わせる必要があるようです。
最後に、男女を問わずにサルコペニア予防法・治療法としては、ミオスタチン阻害薬の開発も注目されています。
現在では副作用をもたらさない薬剤が開発中ですが、筋形成を強く阻害するミオスタチンの活性を減少することができれば、強力な治療法になる可能性があります。
 

引用文献:

Dent, Elsa, et al. "International clinical practice guidelines for sarcopenia (ICFSR): screening, diagnosis and management." The journal of nutrition, health & aging 22.10 (2018): 1148-1161.

Barnouin, Yoann, et al. "Testosterone Replacement Therapy Added to Intensive Lifestyle Intervention in Older Men With Obesity and Hypogonadism." The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 106.3 (2021): e1096-e1110.

Tay, L., et al. "Sex-specific differences in risk factors for sarcopenia amongst community-dwelling older adults." Age 37.6 (2015): 1-12.

Suh, Joonho, and Yun-Sil Lee. "Myostatin inhibitors: Panacea or predicament for musculoskeletal disorders?." Journal of bone metabolism 27.3 (2020): 151.

 

執筆者紹介

 
フィンク・ジュリウス
順天堂大学医学部泌尿器科学講座 非常勤助教

【経歴】
1982年ドイツ生まれ
1986年にスイスに渡りbilingualに教育を受ける
2001年にスイス首都のベルン大学に入学し経済学を学ぶ
2004年に慶應義塾大学にて語学留学を経てベルン大学を卒業

卒業後、日本企業にて数年勤務しているうちにトレーニングの健康に対する効果に興味が湧き、2014年に日本体育大学大学院にてスポーツ・健康科学の博士課程に進学する。
在学中トレーニングとホルモンの関係について研究し、博士課程終了後、順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学講座に博士研究員として入局する。
主にテストステロンと代謝機能について研究し、2019年に順天堂大学大学院医学研究科泌尿器科学講座に入り、より一層深くテストステロンと男性の健康について研究を深める。
日本メンズヘルス医学会においても活躍し、日本のテストステロン補充療法の普及に努める。
2020年には米国に渡り、New YorkのCUNY Lehman Collegeにてトレーニングと筋肥大の研究を再開し、トレーニングとホルモン・筋肥大の関係の解明に一層近づく。
2021年より順天堂大学大学院医学研究科泌尿器科学講座客員准教授に専任され、現在米国のLos Angelesにてメンズヘルスの研究を行い日本に最新の研究や治療情報を発信している。


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