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| 日本Men's Health 医学会 理事長 熊本 悦明 |
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| 撮影 / 高橋 佳代 | |
1. 中高年のための男性医学
"男はつらいよ"という渥美清の映画"寅さんシリーズ"が今も人気を失わないでいる。それ程評価されている寅さんに代表される中年男性のイメージは何か、男性医学の立場から大変興味ある所であるが、一般的に持たれている男性像とは逆説的なあり方が、かえって社会的な共感を呼んでいるのかもしれない。
最近男が弱くなったという社会的風潮を象徴する何か弱々しい、女性側から喝采される男性イメージは、本当の生き物・男性の姿とはほど遠いものである。文化人類学的立場からか、また生き物らしい人間・男の歴史的な強い在り方に対して批判色の強い近代文化の流れから生まれた産物とも言えると感じている。
このような社会的風潮の為か、これほど医学が進歩しているにも拘わらず、今まであまり"男とはなんぞや"という視点からの医学的心理学的又社会学的分析がなされていなかったといえる。さらに話を広げてみると、最近社会的に注目されている性差医療論議においても、女性に対する医学的対応の確立にあまりにも焦点が合わされ過ぎており、男性医学への視点は極めて少なく医学的関心も低いといってよい。
今までは男性は文化の衣をきて非生物的ロボットの様に受け止められ女性のみが生物学的な人間の立場を独占しているのが、今までの社会的な風潮のように見えてならない。それでは男女平等が叫ばれる世の中なのに男性は浮かばれない。
この様に男性への社会的視点が少ないばかりか、医療の分野においても、男性医学がかなり女性医学の後塵をはいしているといってよい。
今までは端的に言えば"男性は人間"、"女性はその人間の上に女性性が乗っている"という発想であった訳で、人間の上に男は男性性、女は女性性がのっているという真ん中の公平な発想にそろそろ振り子を戻すべき時がきているのではないだろうか。あらためて男性性への注目を喚起させねばならないと痛感している。
男を男たらしめている男性内分泌学は、医学研究者の関心も反映してか女性内分泌の進歩に比してかなり水を開けられていて、最近漸く遅ればせながら、男性分泌学の基礎研究の機運が動き始め、さらに臨床男性内分泌学がそれを追う様に徐々に発展しつつある。
ことに世界的にも先進国での長寿化に対応する医学問題の中で、中高年男性の臨床医学の遅れが医学界で注目される様になって来た訳である。
その国際的な臨床男性医学、殊に男性側のAging問題への対応の遅れへの危機感が昂ぶる中で、1997年にWHOも動き始め、その後押しもあって、Agingmale研究Groupが、臨床男性医学の立場から"Study for healthy aging for men"を標榜して、Weimar Initiation を発表した。
2. Aging Male 研究医学会の歩み
その翌年、1997年その"Initiative"を普遍した形の"Geneve Manifest"が発表され、その地でInternational Society for the Study of the Aging Male (ISSAM)が創立された。それにつれ学会雑誌"The aging male - Research on gender-specific issues in male health issues"も発刊される様になった。
女性側ではまだ"aging female"という用語は殆ど使われておらず、"Climacteric and more"などと表現している。これは男女の加齢に対する受け取り方のニュアンスの違いがあるためかもしれない。
女性はあくまでもagingに抵抗して、若く美しさを長く保つべしという発想からの"anti-aging"であり、男性は加齢を受け入れつつも如何にlivelyでかつ高いQOLを保ちつつagingしていくかという考え方に立脚し"Healthy and active aging"という考えに立っている。その発想の差が表現の違いにもでているといえる。
いずれにせよ、世界的な長寿化が進む中。生殖年代を終えた男女人ロが急増し、その長寿者の健康・QOLを如何に維持していくかが、21世紀に向けての医学界の大きなテーマになってきた。
その医学的問題の中で、女性側の母性保護・更年期対策などをはじめとする医学界・衛生行政は、未だ不十分とはいえが積極的に行なわれているのに比して、男性側への対応はかなり遅れが目立つ。そのうえ、男性側は女性側に比して数年ものlife spanが短いのはなぜかということも大きな問題である。
その"Healthy aging for men"のためには、当然のことながら"multidisciplinary medical care"とともにholistic approachも強く求められることが強調されている。そしてさらに医学界をかこむ医療産業・医療行政、またいわゆる慈善団体なども含め、広く国際的な全社会的立場からの協調や支援なくして、それが実現しないことも併せて主張している。
要するに20世紀間での医学の中心は"Diseases in men"という発想であり、生死に繋がる問題に検討の焦点が合わされていたといってよい。しかし、21世紀は"長く生きる以上は高いQOLを維持する"ことに意義があるという発想に変わりつつある。
その為"Diseases in men"の発想から、"Men with diseases"へと発想転換し、医学の枠を越えた社会的生活する人間全体を捉えての対応が求められる様になってきた。その立場に立った医学的アプローチによって始められる"Healthy, active and wisely aging men"が可能となる。ISSAMはそのような広汎なaging male医学への新しい発想を提案している訳である。
その国際Aging male研究学会(ISSAM)は、その後2年おきに開催され、2006年ザルツブルグでの第5回学会が盛大に世界中の研究者を集めて開催されるまでに発展している。又、アジア支部(Asia-pacific SSAM : APSSAM)も設立され、2005年1月25~28日にはタイ、チェンマイで第3回が300名の研究者を集めて、多面的な議論の花を咲かせている。その国際的流れに呼応して、我が国でも、2001年11月16日に日本Aging Male研究会(代表世話人:熊本悦明・名和田新)が創立され、その後毎年開催され活発な議論が展開されている。
3. 日本 Men'sHealth 医学会創立 《2006年11月26日》
我々の日本aging male研究会も徐々に発展しつつ、次の様な学術集会を持っている。
第1回(2001年)東京 熊本悦明会長(泌尿器科)
第2回(2002年)福岡 名和田新会長(内科)
第3回(2003年)大阪 奥山明彦会長(泌尿器科)
第4回(2004年)東京 久保田富房会長(心療内科)
第5回(2005年)東京 村井勝会長(泌尿器科)
この研究会の歩みの中でAsians countryの研究groupと我々研究会との共催でJapan-Asian Men's Health & Aging Confrrenceを持つことになり、2006年6月に第1回学会を(Tan Hui Merry 会長)をクアラルンプールで開催され、2007年には日本・金沢(山中温泉、並木幹夫会長)で第2回学会を持つことになっている。
この研究の流れの中で、研究会を正式に学会組織にすべしという要求もかなり強くなってきた所で、本年(2006年)の研究会から学会化し、鳥羽研二会長(東京)の下で第6回学会(2006年11月26日)を、東京で持つことになっている。そして学会化するに当たって、その際日本Aging male研究会名を、名称を《日本Men's Health医学会》とすることになった。
学会研究の対象が中高年男性に焦点を合わせてはいるが、臨床男性医学の立場から、壮年期からの問題点とのつながりの検討も当然必須である。男性内分泌学を中心とした広い意味での、器質的疾患に偏らない、機能障害問題に主として焦点をあわせつつも、より広く高い視野にたった男性の健康医学(Men's Health)を研究するという姿勢を持つことも必要がある。
その為、我が医学会としては、広い視野に立ったmultidisciplinary的医学のスタンスを堅持しつつ、長寿化しつつある男性の健康を、基礎臨床医学から臨床医学、そして社会医学の立場にも広げて医学的研究・啓蒙をすることを目標とする医学会として発展すべく期している。そこで単に医師や医学研究者のみでなく、さらに広く保健・看護や薬学の分野の方々にも会員として参加して頂き、大きな視点からの中高年男性の健康医学の確立発展に貢献したいと願っている。
男性医学に関心のある方々の会員参加を期待
この様に我が国も含めて世界的に、WHOの支援の下に、"To make lively, happy and healthy aging male"のための医学的アプローチが、女性側の努力に負けない様に徐々に立ち上がりつつあり、社会的な関心を集め始めているといってよく、"男よ頑張れ"ということである。
以上述べた様に、我々aging male研究のポイントは2つある。
aging populationの世界的増加の中で、その人々のQOLを支える医学的全人間的な視野に立ったmultidisciplinary approachでなければならないし、また、"Men with diseases"という立場で研究・医療を行なうべきである。
そのaging populationの中で、女性側へのアプローチは既にある程度進んでいるのに、男性側の遅れがかなり目立つ。男性も単なる中性人間ではなく、男という衣を着た生き物ということを直視し、Aging Male学会誌の副タイトルにある"Gender-specific medicine for men"という視点での医学的また社会的アプローチが必要であるということである。
この学会の趣旨に賛同して戴ける多くの関係各位の学会へのご参加を期待し願って止まない次第である。

